2013.12.29 Sunday

エドワード・ゴーリーの理性的な闇と猫を握りしてめて唄う娘




Edward Gorey「The Doubeful Guest」

大好きな絵本作家、エドワードゴーリー。出会いは、シンガポールに住んでいた十代の頃。塾の帰りに寄ったオーチャド・スコッツ伊勢丹の裏手、MHVのBookコーナーでした。
一見、この表紙だけ見ると「Dr Suess」みたいなひょうきんさすら感じますが、とんでもない。おそろしく、ダークで、理不尽。奇跡も、シナリオ通りのハッピーエンドもありません。それでもなぜかすごく気になって、それからシンガポール内の大きい本屋さんをめぐって何冊か手に入れました。



「The Hapless Child」

(via HUFFPOST 子供は次々と死ぬのに猫は不当な目に遭わないエドワード・ゴーリーの世界とは?

黒一色で神経質なほど描き込まれ、塗り込まれた不気味な世界。物語は理不尽なほどに残酷。世の中は決して平等でもなければ、ハッピーでもない。上のリンクにもあるように、人より動物にやさしいエドワードゴーリーの作品は、人間の業を冷静に見つめ、悲観する訳ではなく、ただ静かに淡々と滲み出る闇や不幸を描いている。決してオシャレサブカルとかダークファッションとかじゃない、もっとラディカルな誠実さを感じて、不安定なアドレセンスの渦中にいたわたしは、ある種の救済を感じたのを覚えています。

悲運に抗うから人は不幸になる。
静かで理性的な闇はいつも優しいのです。


Edward Gorey 80th aniversary @ google 2013.2.22(奇しくも猫の日!)

※ちなみに、日本で紹介されたのはご本人が亡くなった後の2000年以降のようですが、最近ちょっと人気出てきてるみたいです。個人的なキュンポイントとしては、日本語版訳者が柴田元幸さん!と、いうところ。サリンジャーやポールオースターなど、現代米文学の名訳者さまです。原作版しかもってないけど、柴田さんバージョンもこれから集めて行きたい。もうなにより、「”Doubtful” Guest」を、「”うろんな”客」と訳した柴田さんに敬服です。美しすぎる。

ーそんな、大好きなエドワード・ゴーリーの日本初コレクション展があったことを終了後に知るという不幸が素直に受け止められない業の深い私ですが、悔しさにもんもんとしながら読み返してたらあることに気づきました。

***

最近、アニソン祭りに飽きてYoutube漁ってたら面白いバンドを見つけたのです。
ウィキにも乗ってなくて、いわゆるインディーズバンドっていうのかな?(無知ですみません)

※個人的には「半分個カーディオイド」って曲がすごく好きなんですけど、つべにありませんでした…残念。
itunesにあった。このアルバムの8曲目ですね。

Jazzyな美しい旋律と子気味良いリズムの上を、痛々しい言葉と美しい男声のハイトーンボイスがくるくるひらひらとひるがえってるのです。すごく心地がよくて、このところものっそいヘビロテでリピートしてたのですが、久々にゴーリー絵本引きずり出してたら、なんとなくその心地よさの意味がわかりました。80年代っ子的に歌謡感のあるメロディーラインの馴染み良さはもちろんですが、リリックワークがとても印象的。「前向き成分」が徹底的に排除された陰鬱な世界でありながら、あまり湿り気はなく、全体的に自虐的に茶化された闇がすばらしくポップにバランスを保ってるため、聞き手の精神状態に関わらず優しく暗い心の深みのほうからじんわり響いてくる。

先日年末の勢いで、ライブハウス的なところへ生演奏を聞きにいったのですが、すごくプロフェッショナルな美しい演奏と、ヴォーカルの圧倒的な歌唱力に鳥肌たってしまいました。ちょっと挙動不審ぽい女の子が、猫のぬいぐるみをにぎりしめて唄う姿はとても愛らしいものでした。・・・・あれ?男の娘か。

***

アンプレザントネスの大衆性/

”I'm claiming the right to be unhappy.”
ー「Brave New World」 Aldous Huxley


2013.06.14 Friday

フラペチーノとアルハンブラの思い出

 

仕事のBGMにInstrumentalな曲を探してたら懐かしい曲にぶつかった。 クラシックギターの名曲、トレモロが美しい、「アルハンブラの思い出」。 父が弾くギターを聞かなくなって、何年たったんだろう。

 

2007年07月09日 お父さんの、左手の指が飛んだ。

 

今日夕方、洗濯物を干していたら電話があった。タモリ倶楽部のオープニング「Short Short♪」が着メロで鳴って、取り立て嫌な予感もせずに電話に出たら妹からだった。 「お父さんがリビングの棚を作っている途中に電ノコで指を切った。家の前は血の海で、今聖マリアンナ病院についたの。詳しくはまだ分からないけど、とりあえず報告ね。」 ・・・って、おい!「とりあえず報告ね」って言われても、どうしろっていうのさ。指は、切ったの?取れたの?戻るの?どうなの?!?でも切っただけなら・・・・。

 

我が家はそのころ買った家に引っ越したばっかりで、建築士の父は初めてのマイホームということもあり、お金を浮かすためとか言いつつ張り切って内装のDIYに励んでいた(慣れないくせに)。 わたしは、そんな電話を受けただけで、容態のわからないままどうしたものかと悩んでいた。とりあえず洗濯を終え、しばらくぼーっとしてみたけれど、やっぱり心配なのでちょっと遠いが病院にいくことにした。

 

緊急事態だって分かっているのにすぐ駆けつけることをしなかったわたしは、どこかで現実を受け止められなかったんだと思う。なぜか「どうしようかなぁ?」なんて思っていた。

 

電話から1時間近くたって、ようやくのろのろと家を出た。 途中で母と電話がつながり、父の容態を聞いた。「目の荒い電気ノコギリで左手指先を切断したため、縫合は不可能、壊死を防ぐためにも切断しなければならない。」大っきなサングラスをしていたことが功をなした。歩きながら涙がボロボロ出て来た。大好きなおとうさんが傷ついている。妹は一生懸命、玄関の血の海で父の指の肉片を探したという。

 

おとうさん!おとうさん!!

 

急に事態を理解したパパっ子のわたしは、しょんぼりしてるであろう父の姿を想像したら、いてもたってもいられなくなった。かわいそうでたまらなくて・・・・。

 

とはいえちょっと気を許すとまたわたしの意識はみるみる現実から遠のいた。さっきまであんなにうろたえていたのに、気づくとのんきにコンビニで昼食のビスケットを買い、スタバでぼやぼや油売ったりしてた。

 

空っぽのコーヒーフラペチーノを片手に病院についた時、現実はやはり現実だった。困った顔の母、感情を顔に出すまいと強がりつつも、ややあきれ気味の妹・・・。たいした欲もなく、人を蹴落とすようなズルさもなく、のほほんと妖精のように生きてるうちの父に限って、どうしてそんな目にあうのか・・・。手術は2時間近くかかった。

 

ようやく待合室に呼びに来た医者につれられ処置室のなかに入ると、治療台の上で呆然とした父の姿があった。それは麻酔のせいだけじゃないことはなんとなく分かった。父の白髪まじりのアタマは、鳥の巣のように爆発していた。

 

人は、目にも見えない小さな変化から露骨なまでも大きな変化まで、生きている限り常にその姿を変え続ける。止まることを知らない時間を積み重ねるなかで、まるで肉体を消費するかのように身をすり減らして生きる。

 

その日、その瞬間から父の左手の中指と薬指の先は無くなった。

 

***

 

病院の処置室をでるとき、父が切断した指を持って帰りたいと言って医者を困らせた。

 

父が病室を出た後、「そんな患者さん初めてです。実際のところ法律的にもどうなのかわからない」と看護婦と顔を見合わせる医者に頼み込んで、こっそり骨のかけらをホルマリン漬けにしてもらって来た。ただ父は、小さな骨のかけらにこだわったわりに、ぱっくり切れた指の先にはあまりこだわらなかった。そのあたりは娘のわたしもさすがによくわからないが、骨ならまだしも、それはあまりにグロテスクなので病院のほうで処理してもらうことにした。とにかく、無くなった指先の一部とともに、父はふらつきながら帰路についた。来る時は一秒を争ってカーチェイスばりだったという妹が運転する車のなかで、「お前は運転が荒いから気をつけろ」とかとぼけたことを言う父。

 

その後も「作業が止まっちゃうな」とか「着替えが困ったな」とか相変わらず的外れなことを口走りつつ、ぼそっと「ギターが弾けなくなるな・・・」と言った。

 

ギターはうちの父にとって象徴的とも言えるアイテム。

(厳密にはギターとテニスとピーナッツ。)

 

忙しくしてて、しばらく弾いているのを見たことが無かった。

 

最後に聞いたのはいつだっただろう。

 

スナフキンみたいにギターを弾く父の姿を見て育った私は、 その言葉がなによりも悲しかった。

 

* その日のコーヒーフラペチーノの味は覚えていない。

 

6078059_15.jpg


Calendar
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< July 2019 >>
Selected Entries
Categories
Recent Updates
Archives
Recent Trackback
Profile
                 
Others
            
            
Search this site.
**********
Mobile
qrcode
Powered by
30days Album
無料ブログ作成サービス JUGEM